
FTbの露出計が反応しない
普段から使用しているキヤノンのFTbというフィルムカメラがあります。このフィルムカメラを使おうとしたときに雨が降っていました。そしてその翌日に露出計が壊れてしまいました。
症状はFTbには本体の左側に露出計のONとOFFと露出計が生きているかのテストようの切り替えスイッチがあります。そこを操作しても何も露出計が反応しなくなってしまいました。露出計が無反応なのでボタン電池の電圧が低下したのではないかと思ったので新品のボタン電池に換えましたが相変わらず反応しませんでした。
FTbとは
そもそもまずキヤノンのFTbとはどんなカメラなのでしょうか。
このカメラは1970年ころに販売されたアマチュア向けのフィルムカメラです。プロ向けのキヤノンF-1に対して販売されたのがその弟分のFTbなのです。上位機種との違いはファインダを取り外してウエストに合わせて見下ろして覗くことができるファインダとし使うことができるかどうかの違いとF-1は最速のシャッターが2000分の1なのに対してFTbは1000分の1になっているなどの違いがあります。超ざっくりとした説明なので詳しく見たい方はこちらのサイトをどうぞ。
分解する
大体の故障されている箇所が予想できたので早速分解していきます。分解しながら原因を特定していこうと思います。が、いきなり問題にぶち当たりました。カメラのトップカバーのごちゃごちゃしたいろいろなダイヤルがついているところを軍艦部といいますが、その軍艦部についているダイヤル類が通常のねじではなく2個の穴のみ開いているねじで締められていました。これはカニ目レンチという時計などで使われるレンチで開ける必要があります。カニ目レンチについてはこちらを見てください。そして、カニ目レンチなんてものは自宅には存在しません。何とかしてこのカメラをこじ開ける必要があります。そこで、カニ目レンチの代わりになるものを作ってやろうと思います。
カニ目レンチを自作
カニ目レンチの代わりになるものを自作していきます。まず100円ショップを探索して使えそうなものを探しに行きます。機械的な要件は金属のダイヤルのねじ(固着している可能性がある)を回すことができるくらいの強度があることと加工しやすさも考慮する必要があります。ノギスの内径を図る側のとがっている部分で回そうと心見ましたがそこそこ硬くてノギスがゆがみそうなので止めました。測定機器がゆがんだら測定器具として使えなくなってしまいますからね。
さて、100円ショップで購入してきたものはこちらです。
アイスのトング…です。これならそこそこ強度あるのでは?ステンレスぽい見た目してるし。これを、、、
思い切りぶった切ります。使うのはこっち側ではなく、反対側です。
こっち側。上部のギザギザしているところを平らにして、下面をねじの穴に合わせて加工します。
こちら側も加工します。これでカニ目レンチ(仮)は完成。
二か所のねじを回すことができることを確認!
さて、ここまでは分解のための器具を作る過程なので、本番はここからです。
分解!
まず自作のカニ目レンチ(仮)でねじを緩める前にやっておくことがあります。それは大前提として
- フィルムは抜いておく
- ISOを25にしておく
- シャッタースピードを1000分の1にしておく
- ボタン電池をとっておく
これらを最初にやっておく必要があります。そして追加でダイヤル等の角度を覚えておくと戻すときに楽になります。
これらができたらダイヤルなどを外していきましょう。外すときは摩擦低減のためのワッシャー類が大量に出てきますので取り出した順を覚えておきましょう。
まず初めにこの写真の通りに赤矢印で指しているダイヤルの中心部分とレンチ(仮)が当てられているフィルム巻き上げのレバーのねじを取り外します。
次に軍艦部の左のフィルムを巻き上げる赤矢印で指しているクランク部分を外します。
外し方は簡単で、パトローネをセットするところを抑えながらクランクを反時計回りに回すと取り外せます。ここで軸は抜く必要はありません。
次に、青矢印の部分の本体ねじとシャッター部分のイモネジを外します。
シャッターボタンとロック機構には3か所に小さなイモネジがありますのでそこを緩めます。3個イモネジが取れたらロック機構&シャッターボタンのセットで上に持ち上げるととることができます。
次にカメラの正面のねじと側面のねじを外します。ここまでくるとトップカバーを外すことができます。
外すことができました。赤の丸で囲ったところは半固定抵抗が並んでいます。露出計の感度などを調整する部分です。このカメラは露出計の感度はあっているので今回は触りません。青い部分は露出計の針があります。ここも非常に細い針が動くので触って曲げてしまわないように注意する必要があります。ファインダーをのぞくと針は右側にありますがプリズムで反転された像を見ているので本来は左側にあります。紫の□で囲ったところが露出計のスイッチの接点があります。
雨で濡れて動作しなくなったので雨の侵入経路はクランクの部分かなーと思います。それから考えられるのは雨による接点の腐食です。
赤い部分は電池の残量確認のための接点で青い部分は電源ONの接点です。この細かいところをバーなどで研磨するのは難しいので今回は接点復活材を吹きかけて表面の酸化膜を溶かして電気的な接触を復活させてみようかと思います。よく知られているこの商品を使います。
接点復活材を吹きかけてしばらく放置し、ボタン電池をセットして接点をつまようじで接触させてあげたら見事針が動きました。
トップカバーやダイヤル、レバー等を分解した順番で元に戻してあげれば完成です!
最後に
機械は故障するのは大体何種類かに原因を分類できます。
- 接点の接触不良
- コンデンサの破裂
- コンデンサの破裂でまき散らされた電解質による漏電
- 物理的な破損
- ソフトウエアの故障
などしかありません。今回は接点の接触不良が原因だったので接点復活材で治すことができましたが、さすがにソフトウエアの故障は素人になおすことはできません。コンデンサの破裂は電圧と静電容量があうものに交換すれば治せます。ちょっとの工夫で無駄な出費を抑えることができます。この記事はFTbを修理しましたがおそらくF-1なども基本構造はあまり変わらないと思います。このブログではほかにもいろいろ修理したり改造したりしています。何かの参考になればいいなと思います。